BLOGぱしゃ山さんのブログ

人生を変える旅に出よう。

1998年、20世紀も終わりを告げようとしていた頃、僕はユーラシア大陸を横断するシルクロードの旅の途上にいた。中央アジアに位置するウズベキスタンのオールドタウンを撮影していた時、ふと空を見上げると小高い丘の上に何かがあると感じた。路地を抜け、その丘へと続く階段を無意識に駆け上がった。静かな風が吹き去った丘の上は猛烈な渇きを感じる空間だった。墓地だ。

中央アジア諸国の宗教はわかりにくいが、イスラム国でムスリムも多い。しかしながら旧ソ連であるため、ソ連時代の特徴ともいえる墓碑に死者の顔を刻み込んだ墓石が立ち並んでいる。なんとも言えないリアルな肖像だ。目の前の墓石に目をやると「1972.26X-1982.9X」という文字があった。刻み込まれた顔は、あどけない少女のものだった。10年…。そうだ、この少女は10年で生涯を閉じたのだ。長く生きた人生が幸せとは限らない。しかし、少女の10年はいかなる時間だったのか、想いを馳せたところで答えはない。

墓碑に一礼をし、一回だけシャッターを切った。なぜだかファインダーがにじんで見えた。この墓碑の前で「絶対に写真を撮り続けることをあきらめない」そう思った。いや、そう誓った。
嘘ではない。人生を変える旅がある。人生を変える1枚の写真がある。